はじめに
「遺言書がある場合は、その通りの相続になるの?」
「手続きってどう進めたらいいの?」
相続において遺言書の存在は非常に大きな意味を持ちますが、内容や形式によって手続きが異なるため、注意が必要です。
今回は、遺言書がある場合の相続手続きについて、順を追って解説します。
目次
1. 遺言書の種類によって手続きが変わる
まず最初に知っておきたいのが、「遺言書の形式によって、相続の手続きが違う」という点です。
主な遺言書の種類は次の3つです。
種類 | 主な特徴 | 手続きの違い |
自筆証書遺言 (自分で保管) | 本人が手書きし、 自分や知人などが保管する。 | 裁判所で「検認」が必要 |
自筆証書遺言 (法務局の保管制度を利用) | 本人が手書きし、 法務局に保管してもらう。 | 「検認」が不要 |
公正証書遺言 | 公証役場で作成 | 「検認」が不要。 原本が保管されていて安心。 |
秘密証書遺言 | 内容を秘密にできる | あまり利用されていない。 「検認」が必要。 |
特に多いのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。
どちらの形式かを最初に確認することが、相続手続きの第一歩になります。
2. 自筆証書遺言が見つかったら、すぐに開けてはダメ!
家の中で封筒に入った遺言書を見つけたら、つい開けたくなりますよね。
でも、自筆証書遺言を勝手に開封すると法律違反(過料の対象)になる可能性があります。
✅ 正しい手順
- 開封せずにそのまま保管
- 管轄の家庭裁判所に「遺言書の検認」を申し立て
- 裁判所での開封・確認(相続人全員に通知される)
※封がされていない遺言書でも、形式が整っていれば効力を持つ場合があります。
法務局の保管制度を利用しよう!
自筆証書遺言を法務局に預けて安全に保管できる制度です。
預ける時に、遺言として有効かどうかのチェックをしてくれるため検認が不要で、紛失・改ざんのリスクも防げます。
2020年7月から開始され、手数料は1通3,900円。
確実な遺言の実現を図る手段として注目されています。
3. 公正証書遺言ならスムーズに相続が進む
公正証書遺言の場合、作る時の手数料はかかりますが、家庭裁判所の検認が不要で、保管も公証役場がしてくれて安心です。
相続手続きは、作る時に渡される遺言書の写しを、銀行などに持っていけばOKです。
公正証書は、無効になる可能性が無いので、その安心感が強みでしたが、上記の通り、法務局の保管制度で自筆証書でもその安心感が得られるようになったため、今後は利用者が少なくなるかもしれません。
ただ、作るところからサポートしてくれて、手書きする必要がない点では、まだメリットがあります。
4. 遺言書の内容に従って遺産分割
遺言書通りに財産を分ける場合は、「遺産分割協議」は不要ですが、次の点に注意が必要です。
☑ よくある注意点
- 書かれていない財産がある → 書かれていない財産については、遺産分割協議が必要
- 遺言の内容に不満がある相続人がいる → 遺言に従うことになりますが、関係性は悪くなる
- 遺留分を侵害している → 不足分を請求される可能性あり
遺留分について
たとえ遺言書に「すべて長男に相続させる」と書いてあっても、
他の相続人には**最低限の取り分(=遺留分)**が法律で保障されています。
🔹 遺留分とは?
→ 相続人のうち、配偶者・子・直系尊属(親、祖父母)が持つ最低限の取り分
※兄弟姉妹には遺留分はありません。
🔹 侵害されていた場合
→ 「遺留分侵害額請求」を行うことで、金銭で取り戻すことができます。
※遺留分には**時効(1年)**があるため、早めの確認が大切です。
5. 手続きのサポートは専門家に依頼できる
遺言書の内容を正確に読み取り、相続登記や金融機関の手続きを進めるには、司法書士や行政書士、弁護士など専門家の力がとても役立ちます。
相続人の間でトラブルの火種がある場合や、財産の種類が複雑な場合には、早めに相談するのが安心です。
まとめ|遺言書がある相続は「内容の確認」と「形式の理解」がカギ
遺言書があるときの相続は、一見スムーズに見えて、内容や形式の違いによっては思わぬ落とし穴もあります。
- 自筆証書遺言(自分で保管) → 検認が必要
- 自筆証書遺言(法務局で保管)→ 検認が不要
- 公正証書遺言 → 検認が不要。作るところからサポートしてくれる。
- 内容に注意 → 遺留分や書かれていない財産に要対応
遺言書を正しく活用し、落ち着いて相続手続きを進めましょう。
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