自筆証書遺言の正しい書き方と落とし穴

相続

相続対策を考え始めたとき、最も手軽に作成できるのが自筆証書遺言です。

費用をかけずに自分一人で作れる反面、書き方を間違えると無効になるリスクがあります。

本記事では、自筆証書遺言の正しい書き方・法的要件・よくある落とし穴・トラブル回避策まで、実務視点で詳しく解説します。

遺言の種類については別記事をご覧ください。

自筆証書遺言とは?【基本知識】

自筆証書遺言とは、遺言者が自ら全文を手書きして作成する遺言書のことです。

特徴は次のとおりです。

  • 作成費用がかからない
  • いつでも書き直せる
  • 内容を秘密にできる
  • 裁判所の「検認」が必要
  • 形式不備で無効になりやすい

2020年の法改正により、財産目録はパソコン作成も可能になり、利便性が向上しました。また、法務局による「自筆証書遺言保管制度」もスタートし、安全性も高まっています。

自筆証書遺言の正しい書き方【5つの必須要件】

① 全文を自書する

原則として、遺言本文はすべて自筆で書く必要があります。

ワープロ作成や代筆は無効です。

※例外

財産目録はパソコン作成や通帳コピー添付が可能。ただし、各ページに署名押印が必要です。

② 日付を正確に書く

日付は必須です。必ず特定可能な形で記載します。

✔ 令和8年2月14日

✔ 2026年2月14日

✖ 令和8年2月吉日

✖ 2026年2月

もし遺言を書き直した場合、後に書いた方が優先されるため、どちらが後に書いたものか分かるためには日付が必須となるからです。

③ 氏名を自署する

戸籍どおりの氏名を自筆で記載します。

ペンネームよりも本名が安全です。

④ 押印する

押印は必須です。

認印でも有効ですが、実務上は実印が望ましいです。

⑤ 財産を具体的に特定する

ここが最もトラブルになりやすい部分です。

❌「自宅を長男に相続させる」

これでは不十分です。

✔ 土地:〇〇市〇〇町〇番〇

✔ 地目・地積を登記どおり記載

預金も同様です。

✔ 〇〇銀行〇〇支店

✔ 普通預金 口座番号〇〇〇〇

曖昧な表現は避け、登記事項証明書や通帳どおりに正確に書きます。

よくある落とし穴5選

落とし穴① 「あげる」と書く

法律的には「相続させる」「遺贈する」と書くのが安全です。

(相続人になる人(配偶者や子など)にあげる場合は「相続させる」

 そうでない人(孫、お嫁さん、他人など)にあげる場合は「遺贈する」)

「あげる」でも有効になる可能性はありますが、解釈争いの余地を残します。

落とし穴② 予備的遺言を書いていない

例えば、

「長男に相続させる」と書いたが、長男が先に亡くなった場合は?

何も書いていなければ、その遺言は意味をなさなくなってしまいます。

✔ 「長男が先に死亡していた場合は、その子〇〇に相続させる」

このような予備的遺言が重要です。

落とし穴③ 遺留分を無視する

遺留分については別記事で解説していますのでご覧ください。

配偶者や子には遺留分があります。

極端に偏った内容は、後に「遺留分侵害額請求」を招きます。

争いを防ぐには、遺留分を意識した設計が不可欠です。

落とし穴④ 付言事項で感情を書く

自由にメッセージを書ける付言事項には法的効力はありませんが、特定の相続人を非難するような内容は、争いの原因になります。

理由説明程度にとどめるのが賢明です。

落とし穴⑤ 保管方法が危険

自宅保管の場合、

  • 紛失
  • 改ざん
  • 発見されない

といったリスクがあります。

法務局の保管制度を活用すべき理由

法務局の自筆証書遺言保管制度を利用すると、

  • 家庭裁判所の検認が不要
  • 紛失リスクがない
  • 形式チェックを受けられる

費用は3,900円と低額です。

自筆証書遺言を作成するなら、保管制度の利用が実質的に必須レベルと言えるでしょう。

自筆証書遺言が向いている人・向いていない人

向いている人

  • 財産がシンプル
  • 相続人関係が良好
  • 費用を抑えたい

向いていない人

  • 相続人間が不仲
  • 財産が多い・複雑
  • 事業承継が絡む

このような場合は、公正証書遺言を検討すべきです。

まとめ|遺言は「想い」ではなく「法律文書」

自筆証書遺言は手軽ですが、形式ミスや記載不備があると無効になります。

特に注意すべきポイントは次の5つです。

  1. 全文自書
  2. 正確な日付
  3. 署名押印
  4. 財産の具体的特定
  5. 予備的遺言の記載

遺言は感情がメインではなく、法的効力を持つ文書です。

「家族がもめないために書く」のが遺言の本質です。

形式だけでなく、内容設計まで含めて慎重に検討しましょう。

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