相続税の申告は、専門性がかなり高いため、税理士に依頼する方がほとんどです。
実際、相続税申告の8〜9割は税理士が関与しているとも言われており、自分で申告する人はかなり少数派です。
率直に言って、かなりの覚悟と時間と気力が必要で、おすすめもしませんが、どうしても自分でしたい!という方がたまにいらっしゃるので、申告の流れを解説していきます。
まず、自分で申告できる余地があるのは、
- 財産がほぼ預貯金しかない
- 不動産はあっても自宅1件のみ
- 相続人同士でもめていない
- 税理士に頼む資金がない
- ある程度民法や簿記の知識がある
といったケースでしょうか。
あと、「税務署に行けば教えてもらえる」という期待はしないでください。
そして途中で挫折して税理士に頼む場合、期限までは短くても4ヶ月はある時点で相談に行くようにしましょう。
まず期限を過ぎてしまうリスクがありますし、料金を加算されることもあります。
目次
全体の流れ
まず相続税自体についての解説は別記事を参照ください。

相続税申告は、原則死亡日から10ヶ月が期限で、次の流れで進みます。
- 相続人の確定
- 財産・債務の資料収集
- 財産・債務の評価額計算
- 遺産分割内容の確定、遺産分割協議書の作成
- 相続税額の計算
- 申告書の作成
- 税務署へ提出・納税
このすべてを自分で管理することになります。
① 相続人の確定
まず最初にやるべきことは、「相続人が誰なのかを戸籍で確定させる」ことです。
被相続人の「出生から死亡までの戸籍謄本」と「相続人全員の戸籍謄本(抄本でも可)」を集め、法定相続人を確認します。
「配偶者と子どもしかいないから大丈夫」と思っていても、前婚の子や養子が判明するケースもゼロではありません。
税務署は、相続人関係を戸籍でしか判断しません。
ここを曖昧にしたまま申告すると、後から修正が必要になる可能性があります。
② 財産・債務の資料収集
次に行うのが、相続財産・債務の把握です。
自分で申告する場合は、「見落としがないか」を常に意識することが重要です。
| 財産・債務 | 必要資料 |
| 預貯金 | 死亡日の残高証明書 過去5〜10年分の通帳や取引履歴 |
| 生命保険金 | 支払通知書、保険証券 |
| 不動産(自宅) | 固定資産税納税通知書や名寄せ帳 |
| 未収金 (還付金などの死亡後の入金) | 支払通知書 |
| 未払金 (医療費、税金、公共料金など) | 請求書、領収証 |
| 葬儀費用 | 請求書、領収証 |
③ 財産・債務の評価額を計算
財産・債務の評価方法は以下の通りです。
| 財産・債務 | 評価額 |
| 預貯金 | 死亡日の残高 (定期預金は死亡日までの利息も計算) |
| 生命保険金 | 入金額 − 非課税額(500万×法定相続人の数) (遅延利息は除外。 外貨建は死亡日の為替レートTTBで計算) |
| 不動産 (自宅土地) | 路線価地域:路線価×面積(※) 倍率地域:固定資産税評価額×倍率 ※ 路線価、補正については以下参照 https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prcf.htm https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm |
| 不動産 (自宅建物) | 固定資産税評価額と同額 |
| 未収金 | 入金額 |
| 未払金 | 支払額 |
| 葬儀費用 | 支払額(原則、通夜告別式のみ) |
別記事でも解説していますので参照ください。

④ 遺産分割内容の確定、遺産分割協議書の作成
相続税申告では、「誰が何を相続するか」を確定させて申告することをおすすめします。
未分割での申告もできますが、確定後に再度申告が必要になることもあるので、申告期限までに確定させた方が望ましいです。
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、内容を文書にまとめます。
遺産の分け方によって、
- 配偶者の税額軽減
- 小規模宅地等の特例
といった減額措置が使えるかどうかが決まります。
また配偶者がいる場合、配偶者が死亡した時の相続税にも関わります(二次相続)ので、「とりあえず均等に分ける」という判断が、結果的に税金を増やすこともあります。
別記事でも解説していますので参照ください。

遺産分割協議書の作成
特に書式はありませんが、以下の内容を記載しましょう。
- 被相続人の特定(氏名、生年月日、最後の本籍、最後の住所、死亡日)
- 相続人全員の特定(住所、氏名)
- 全員で分割協議した旨
- 誰が何を相続するか、明確に分かるように記載。
別記事でも解説していますので参照ください。

⑤ 相続税の計算
以下の流れで計算します。
- 財産から債務を引いた合計額を計算
- 基礎控除(3,000万+600万×法定相続人の数)を引く
- 法定相続分で税額を計算
- 各相続人の実際の取得割合に応じて振り分け
国税庁のHP、別記事も参照ください。

⑥ 申告書の作成
相続税申告書は第1表〜第15表まで、複数の様式を組み合わせて作成します。
自分で申告する場合は、
- 国税庁サイトから様式をダウンロードしたり税務署で書式を取得
- 記載例を見ながら一つずつ埋める
という地道な作業になります。
税務署の窓口では、書き方の説明はしてくれると思いますが、計算の正否までは確認してくれません。
⑦ 税務署に申告書を提出、納税
提出方法は、
- 税務署へ持参
- 郵送
- e-Tax
いずれでも可能です。
納税は原則として現金一括ですが、資金が足りない場合は税務署に相談しましょう。
申告書にミスがあったらどうなる?
ミスがあった場合、「払い過ぎている」か「不足している」かどちらかです。
払い過ぎの場合、税務署は教えてくれません。
自分で気付いたら、「更正の請求」という、払い過ぎた分を返してもらう手続きが必要です。
また、特例などの減額措置を適用し忘れていた場合など、更正の請求ができず取り戻せないケースもあります。
不足している場合、税務署から連絡が来て税務調査になる可能性があります。
税務署の指摘事項を聞いて、どう対処するか検討しましょう。
自分で申告していても、税務調査になってから税理士に対応を頼むことも可能です。
まとめ
相続税申告を自分で行うことは決して不可能ではありませんが、誰にでもおすすめできる方法ではありません。
- 財産内容がシンプル
- 時間を確保できる
- 調べながら進めるのが苦でない
こうした条件がそろって、初めて現実的な選択肢になります。
「途中で不安になったら専門家に切り替える」ことをためらわずに進めましょう。



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